沖縄の本家は相変わらず暑かった。 毎年夏は道場生と一緒に沖縄本家へ琉球古武術の合宿に行く。けれど俺は、関東の、しかも冬生まれだからか、茹るような気温と焼き殺されそうな紫外線には、十二年間どうにも慣れない。 例年と変わらず、紫外線が強いため、海に入るにもシャツを着る必要がある上、外気の熱さ――あえて暑さとは言うまい――と屋内の効き過ぎた冷房の寒さとにうんざりしながらの、本家本元の沖縄古武術道場での合宿。 夕涼みすら出来ず、夕方も暑かった。日陰で風に当たっていればまだマシだが、ずっとそういうわけにも行かない。 旅行で来れば、沖縄料理だの、原色の花々だの、壷屋焼きだの、珊瑚礁だの、透き通った青い海と白い砂浜だの、本土とは違う文化の町並みだの、色々と楽しいのかもしれないが、朝から本家道場の掃除と鍛錬ばかりでは、まだ東京のいた時の方が気温的に、更に紫外線的にマシのように思う。道場にはエアコンがあるが、みっしりと男共が中で運動していれば湿度も温度もそう簡単には最適になってはくれない。 しかし、東京も東京であの湿度はいかんともしがたい。夏は嫌いではないが、少し疲れるのも真実だった。 沖縄も夏も、確かに嫌いではない。嫌いではないが、かと言って好きでもない。好意を持っているし、馬鹿にされれば反論もフォローも長所のリストアップもしよう。けれど、それだけだ。 例えば、大伯母が毎年拵えてくれる苧麻の浴衣の肌触りや、固い琉球畳のひんやりとした感じ、料理で言えばアーラミーバイの洗いやギーラ豆腐、もちろん琉球古武術に空手など、好きなものだって沢山ある。だが、暑いし、紫外線は狂気な兇器だし、テニスが出来ないし、兄と比べられて身体のつくりがヒョロヒョロしてると言われたり、すぐにビールを勧められたり、ゴキブリが鈍くてでかかったり、目が寄生虫で膨らんだカタツムリがいたりと言った好きでない部分も沢山ある。 好悪のメモリがあったとして、嫌いが〇で、好きが一〇ならば、沖縄と夏に対してのそれは五.五から六くらいの数値だ。 |