嫌がらせが、ロッカーにぎっしりと詰まっていた。 《日吉若》と記されたそこは現在、敵意の展示会中らしい。内部に乱雑と遺棄されている不快なアイテムが、強制的に視野を占領してくる。卯の花 ロッカー内を視界に入れたと同時に、部活仲間の鳳長太郎と初めて同じクラスになってしまった時のことを、やはり強制的に思い出させられた。 今、眼前に山と積み上げられている品々から、あの時ほどの醜悪な害意は感じられなかった。ただ幼稚な敵意が、狭小な閉鎖空間からウンザリする程に溢れだしていた。唯一、当時との共通点があるとすれば、犯人が誰であるか推理せずともわかることだ。 そう――。 不運にも鳳と同じ空間に押し込まれたのは、今から三年前、幼稚舎五年の時だった。鳳は当時、男にしては無駄に大きすぎる瞳に加えて、口調も態度も妙に柔らかかった。そのため口さがない連中に、『女みたい』だと陰で揶揄されていた。 けれどそれはクラスメイトの誰もが言われている日常的なからかいの陰口であり、虐められているというステージではなかった。 出会った当初は、少なくとも俺より鳳の方がクラスにうまく馴染んでいた。幼稚舎五年の鳳は、他人に気に入られることよりも、他人に嫌われないことに長けている印象があり、当時の俺には優柔不断な人間にしか見えなかった。 逆に俺は、好んで単独行動をとっていた。これは現在もそうだが、当時は今より一層一人でいることが多かった。 だからか、血気盛んなクラスメイトには、陰口ではなく悪口を正々堂々ぶつけられていた。その悪口を鼻で笑い、悪意を増幅した上に揚げ足を取ってぶつけ返す対応をしていたおかげで、クラスメイトからは少し避けられていた。幼稚舎五年の俺にとってそれは好都合だった。 けれど、それは俺が男だからなのだろう。幼稚舎レベルでの男女の差異は、群れでの行動が義務付けられているかいないか。 俺が女子であったなら、陰湿な虐めの対象になっていたかもしれない。だが僥倖なことに俺は男であり、教室内で少し浮いている程度だった。少なくとも今も当時も一人でいることで何か不便な思いをしたことはない。 そんなマイペースな俺とアウトペースな鳳に共通する部分はほとんど無く、ただ同じ空間で一年を共にする人間として認識していただけだった。鳳の方も同じだろう。 |