| テニス部正レギュラーの日吉と、その彼女の小曾根香奈が喧嘩しているという話は瞬く間に二学年に広がった。「若のわからずや!」だの「俺は嫌だと言っているんだ」だの、言っているのを聞いた者がいたためだ。ちなみにその直前まで、二人は手を繋いで仲良くしていたらしい。日吉が手ぇ繋いでる! と元気な赤い髪の三年が騒いだため、生徒の注目をあびた。 しかし、一年は初めての文化祭に胸を弾ませていたため上級生の噂にはさほど感知せず、三年は下級生のことよりも元テニス部で元生徒会長跡部の行動以上に気に掛かることはないらしかった。 だから、あくまで二学年を主にしただけの、ひっそりと言うには大きすぎ、流言蜚語が飛び交うほどには大きくない、ただの話だった。ただ、もしかしたら別れるかもしれないという小さな胸鰭くらいはついていたため、二人の回りの人間は息を潜めて静観していた。 ◇◆◇ 俺はもう本当にどこから突っ込んでいいのか迷った挙句全てを放置する方向で決めた。 トンファーがいつの間にか「やっぱり日本刀はかっこいいよ!」という誰かの意見で日本刀に変えられ、俺は今、座頭市を教室のテレビで見ている真っ最中だ。時間がないのでトンファーのシーンを取り直すのは止め、色々な武器が使える男と言う設定に“日本刀がかっこいいから”という理由でなったようだ。こいつらは全員脳みそが沸いているんじゃなかろうか。目からビームが出るとかではなくて安心するところなのかもしれないが。 また、衣装も和服が用意され、実は元華族と言う設定になったことをさっき聞いた。絶対活かされない設定だと断言できる。どこで使うんだ“華族”は。話に欠片も引っかからないキーワードである設定を付け加えてどうしようと言うのか本当に理解できない。 どうでもいいが、秋だというのにクソ暑く、浴衣ならまだしもきっちりときつけられた和服は動きづらい上に暑いことこの上ない。というか、ヤクザにしか、俺には見えない。 だが、忍者の衣装でクナイを投げろといわれても、俺は甘んじて受け入れるだろう。さっさと撮影を終わらせてほしい――その為だけに、俺は、受け入れられることは受け入れることにした。(とてもどうでもいいのだが、向日さんは、その身軽さの為に外国人教師や留学生に“NINJA”と言われている。俺は“SAMURAI”だそうで、“ それにしても、一週間後が文化祭なのに間に合うのかはなはだ疑問だ。俺としては出来上がらなくとも全く構わない。というか、出来なくていい。――いや、出来なければクラスごと内心が下がるので、やはり出来てほしいと言えば出来ては欲しいのだが。主人公が俺でなければ。 座頭市を見終わった俺は七人の侍のDVDに目を落とす。映画を見るのは嫌いじゃない。それが強制でなければの話だが。 俺の役所と簡単なあらすじを改めて説明する。 “ヒロイン・エリカが世界を救う鍵である(何から世界を救うとかそういう細かいことが全く考えられていない話であると先に断っておく)と気付いた元華族(その設定必要か?)の息子。そのエリカを狙う謎の集団(始終謎のままだ)から身を挺してエリカを護り二人は恋に落ちるが(まあ、お約束だな)、エリカを守る戦闘で華族の息子は死亡する。その後エリカは謎の集団にさらわれるが改造人間になって(色々混ぜすぎだ)復活した華族の息子が謎の集団を撃破。しかし、既に人間ではなくなった華族の息子はエリカから身を引く。最後は近所のガキを適当にスカウトして「俺の母さんは昔変な奴らに狙われて〜」とか妙に説明口調で友人に喋りだし、年月がたったことを感じさせて終わる(きっと最近観た映画はきっとタイタニックなのだろう)” つっこみどころしかないこのストーリーに、俺は半笑いすらこみ上げない。道に落ちている汚物並の価値しかない話だ。この、たった一枚の紙にコピーされた台本ともいえないものが、大切な資源の命を絶ったのだと思うと腹立たしくさえ感じる。キティとミッフィと紹介されたキャラはどこで出てくるんだ。こんな人間を捕食しそうな気持ち悪い絵を台本に描くな。 しかも、時間的都合から、俺が死んで改造人間になるシーンはなくなりそうだ。つまり、俺は意味もなくヒロインから身を引くらしい。しかもガキのスカウトもままならない状態らしく、ただの悲恋で終わる確率が、香奈が自分の足に引っかかって転ぶ確率よりも高い。 別にいいが。 この際、何でも如何でもいい。 夜のシーンすら真昼に撮ってるしな。 戦闘シーンで、校庭で爆竹や、火柱の立つだけのショボイ花火を使った所、当たり前のことだが教師に叱られた。 生活指導室に引きずられそうになった自称監督の鈴木は“学生の自由な表現を不当に奪う行いだ”と息をまいて反論し、その気迫に押された教師が「とにかく、火は使うな」と言って退場したため、お咎めなしで撮影続行の運びになった。 俺のクラスの新任教師があとで酷く叱られるだろうと想像もつくが、何でもいいから俺の内申を悪くするのだけは避けてほしいものだ。 「じゃ、次は最後のキスシーンね。これはもうホントにやっちゃって!」 小林の楽しそうな言葉に俺は愕然とした。ヒロイン役の中野も困った顔をしている。それはそうだ。芸能人でもない俺たちがそう易々と想い人以外と口付けなどできるわけがない。そんな単純なことにもこいつは気付かないのか? 「もし、本当にそれを俺にやらせる気なら、俺はお前らが何と言おうと役を降りる。絶対にだ」 文化祭放棄宣言に、周りがざわつく。内申が悪くなろうが関係あるか。 香奈以外の女にそんなことが出来るわけもない。それは俺の妥協できるラインを、大幅に越えた要求だった。今までも今までで、腹に据えかねる要求の時もあったが、これは最高だ。口付けの真似事ですら、俺は肌の触れた部分を濡れたタオルで拭うほどだったのだ。 「日吉は潔癖だなー。ちょっとでいいから! ほんのちょっと! どーせ彼女ちゃんとは、今、喧嘩してるんでしょー?」 「出来る訳もないしやりたくもない。ちなみに喧嘩もしていない」 「日吉ってばー!」 立ち去ろうとした俺の服を小林が掴むが、俺はその手を、かなり乱暴に払う。小林と鈴木が俺の意見を取り入れるまで撮影は中止となった。 ◇◆◇ シンプルなエプロンドレスの裾を、足をパタパタさせて、金魚の尻尾みたいにひらひら動かすのが楽しくて、ずっと椅子に座ってそうしていたら、チョータ様錬金の新作どら焼きが運ばれてきた。なので、一口ぱくり。 ……あ、絶妙にしょっぱくて生臭い…… 噛むのを口が拒否。これをずっと口腔にいれているのも嫌でティッシュペーパーにもそもそと出した。錬金したチョータの晴れやかな笑顔を見て、溜息。 「イカの塩辛……」 親指をグッ、と立ててイイ笑顔で笑ったチョータ。悪戯が成功した子供みたいな顔と例えるのが一番だと思う。香奈ちゃんは味覚が鋭いね、なんて嬉しそうに言ってるチョータの後ろをペットボトルの烏龍茶を飲みながら、ふと見る。チョータの後ろには、私と同じものを食べたらしきまどかちゃん。その、まどかちゃんのかかと落しが、自慢げに頷いたチョータに決まるのを、まるでスローモーションのように目撃する私。まどかちゃん、パンツ見えちゃうよ……? 最近チョータは、いかに不味いものを作れるか、そして私達がそれを食べたときの反応、に拘っているらしい。私達に食べさせる分の試作品にだけ、そうなのだ。どら焼きからししゃもがはみだしていたり。イクラが妖怪百目の目玉のように張り付いていたり。 抹茶を生地に混ぜて、栗の甘露煮を餡に混ぜた宇治金時ドラ焼きや、牛皮と桜の葉っぱの塩漬けとを混ぜて桜の花をあしらった桜ドラ焼きなんて普通の美味しいものも考え出すのに、私たちにだけ悪戯する。 けど、男子は何か、“確かに小曾根と有田は食った時いい反応してる”とか言ってたから、チョータも面白くてやってるんだろうけど。いつもは紳士的で優しいチョータも最近はちっちゃな男の子みたいだなって思う。チョータだけじゃないけど、最近、文化祭モードでみんなどこかしら違う感じ。ハイテンションだったり、そわそわしてたり、逆に“こんなんに本気になるとかくだらねー”みたいな子もいたりして。 あの若ですら、渋々とはいえ、(変なって言ったら悪いけど)映画の主演男優に抜擢されても、断りきれずにやっちゃってるんだから、やっぱりみんないつもと違う。文化祭パワー。 でも、そろそろ、他のクラスメイトもさすがにチョータに「それはやばいでしょ」とかツッコミ始めている。うん、遅い。 まどかちゃんのすらりとした美脚が見事な足技でチョータを撃破しているのを横目で見て、まどかちゃんも、最近テンション高いなぁ、なんて思いながら、手元の、シアンとマゼンタの二色で刷られた、可愛いお姫様と王子様の微笑むチラシに目を落とす。 “氷帝学園ベストカップルコンテスト” 若は嫌がっているけれど、出たい。何故なら優勝商品が私がずっと食べたいと思っていた予約の大変なイタリアンのレストランにペアでご招待券。シェフは、農家の見学案内をしていたりもする人で、世界中の塩を使って料理をする。一度、何かのパーティで会って、変わった人だなと思っていた。大人ばっかりのパーティでつまらなそうにしている私に「水を美味しくしてあげようか?」なんて、魔法使いみたいなことを言った人。パーティのしばらく後にテレビに映っているのを見て、あの人だ、って気づいてから、ずっと気になってた。食べてみたいなって。 けれど、色々考えてる。 優勝出来るのかな? とか……うーん、優勝できなかったら恥ずかしいだけ損だよね。若も嫌がってるし。 でも、普通に私のお小遣いじゃ、絶対に食べに行けないし。 ママにお願いしたら誕生日にくらいは食べに行かせてもらえるかもしれないけど、予約取りはちょっと難しいだろうし。 食べたいけど、もう一度若に聞いてみて絶対イヤだって言ったら、諦めよう。それに、優勝するってことは有名になるってことだし。有名にはなりたくない。 今でも、若は氷帝学園男子テニス部で、二年でレギュラーになったということで学校で知らない人はいないくらいの有名人で、私はちょっとした嫌がらせみたいなのや、詰問みたいなのや、意地悪みたいなのをされたことがある。それ自体は仕方ないかなっていうのも、あるけどでも、やっぱり、されなくていいならされたくない。 そもそも、目立つのって苦手だし。 あーでもないこーでもないと考えていたら教室の外に置く立て看板の色塗りをするように学級委員様に申し付けられました。作業用エプロンを借りてペタペタ色塗り。美術部の友達や選択美術の子たちとわいわいしながら色を塗っていく。一人で描くのも好きだけど、こういうのも楽しいな、なんて。 途中で、パステルを使うことになったので美術部員の私が美術室に借りに行くことと相成りました。 廊下を歩きながら外を見ると、若のクラスの撮影現場が見えた。 そろそろ夕方に差し掛かる頃、校庭に火柱を立てるのは若のクラスくらいだろう。残念ながら、若の姿は確認できない。 若がんばってるのかなぁ、とか、どこにいるのかなぁって外を見ながらとてとてと歩いていると、よそ見していた所為で思いっきり人にぶつかってしまった。 「っと」 「〜っごめんなさ……!」 ああ、前にも若に廊下を走るな前を見ろって叱られたのに……よろけて尻餅をついてしまった。うー、結構痛い。頭がぐらぐらする。びっくりした…… どきどきしてる心臓を宥めつつ、ぶつかった相手を見ると、三村く……じゃなくて、三村。思わず固まってしまう。 私にぶつかられた三村は平然と立っていて、こんなことで、男の子と女の子は違うんだなって実感する。私には思わず倒れてしまうほどの衝撃も、三村にとっては、ちょっと身体を揺らすくらいのものなんだって。 座ったままの私の腕を、三村が掴んでぐい、っと引っ張る。抵抗する暇はなかった。立たせてくれるのはありがたいけれど、その力に加減がなくて痛い。 若はどちらかと言うと蚊トンボを抓むみたいに恐る恐る私に触るので、三村が乱暴なのか若が臆病なのかと一瞬考えてしまった。ああ、でも、若もすごい乱暴な時もあるよね。本人にその気はないかもしれないけど。 「ありがとう。あの、手、離して?」 おずおず、言ってみる。自分の口から出たセリフにを覚えつつ既視感を覚えながら三村に言う。三村は腕を掴んだまま変なことを言った。 「文化祭の後夜祭、サボるなよ」 「その気は、ないけど……?」 何でそんなこと? 、と思っていたら私の腕を掴んだまま三村が歩き出す。急な展開についていけずに、それでも、私の中のなけなしの本能が危機感を覚えて、腕を引く三村に抵抗するように、廊下で仁王立ち。乙女のすることじゃないけど、でも、怖い。 何をされるのかも怖いし、それで若が怒ったり不機嫌になったり悲しんだりするのが、一番怖い。 「美術室行くんじゃねーの? こっちの方向に用事があンだろ?」 「あるけど、一人で行けるもん」 手を離して欲しくてわたわたしていると、三村がちょっと驚いた顔。いやいや、私だって好きじゃない男の子に腕を掴まれてたら抵抗くらい……って、あれ? 私の頭上で聞こえた笑い声に、視線を上げる。ちょっと尖り気味の綺麗な顎が見えた。むしろ、顎しか見えない。でも、私の真後ろに立った人が笑っていることは確実。 「嫌がってる女引きずってく気かよ?」 うわ、この声、聞いたことある。 そりゃ、元生徒会長の声だし、聞いたことはあるに決まってるんだけど。その元生徒会長が跡部先輩なわけで。 三村はバツが悪そうに私から手を離して、跡部先輩に頭を下げて行ってしまった。さすが跡部先輩…… でも、私は一連の出来事に頭がついていかないので、ちょっとフリーズ。物事はゆっくり一つずつってお母さんに習わなかったのかな、みんな…… 「“テニス部員は全員、文化祭で何らかのコンテストに強制参加”」 急に、跡部先輩がそんなことを言う。意味がわからなくて、後ろを振り向いて跡部先輩の顔を見ると、跡部先輩はちょっと笑ってた。 「日吉と喧嘩したんだろ?」 「え、あ……――なんで跡部先輩が知ってるんですか?!」 喧嘩って言っても、じゃれあう感じので怒鳴りあったり泣いちゃったりとか、そんなんじゃないのに、なんで跡部先輩まで知ってるんだろう。普通にばかしとか馬鹿香奈とか言いあってただけなのに、しかも、人がいないはずの十九時をすぎた駅へ続く道でちょっとだけ、なのに……うわぁ、恥ずかしい。ちょっと項垂れそうだ。本当に壁に耳あり商事にメアリだ…… 「鳳に泣きつかれたんだよ。日吉をどうにかしてくれってな。日吉のことだ。自分の意思じゃ絶対にオーケーしないだろうと思ってよ」 ……跡部先輩には全てお見通しのようです。まあ、これで私の踏ん切りもついたし、跡部先輩って本当に万能な人だなって思う。きっと背負っているものもいっぱいあって、そんな跡部先輩を支えられる彼女さんはすごいひとなんだろうな……せめて、私は若の重荷にはならないようにしなきゃって決意を固めてると、跡部先輩が美術室に向って歩き出した。跡部先輩に続くように私も歩き出す。跡部先輩も用事があるのかな。 三村に腕を強引に引っ張られたせいで、肩が痛い。そっか、腕を引っ張られると、負荷が肩にかかるんだ、とか、なんだか目からうろこ。 「あいつの機嫌が悪いとテニス部の士気が下がって仕方ねえ」 尊大そうなセリフだけど、やってくれたことといい、行動といい、かなり後輩想いで面倒見のいい人だと思う。でも、確かに最近の若の不機嫌は、凄まじい物があって、結構みんなが私に若のご機嫌取りをするように泣きついてきたりしていて、跡部先輩も私みたいに色々言われたりしてるのかな。 でも、跡部先輩って怖そうだから、きっと、色々言ってるのはチョータだ。 「ありがとうございます」 「礼を言う位なら、あいつの機嫌とってくれ」 美術室のドアを開けながら跡部先輩がめんどくさそうに答えた。跡部先輩が、みんなと同じこと言ってるのが少し可笑しくて笑っちゃう。跡部先輩はそんな私を見ても、ふん、って小さく鼻を鳴らしただけだった。 美術室は既に部員全員が作品を上げてしまったためにもぬけの殻。ちなみに美術室の作品展の飾りつけも終了していて、美術部員はクラスの催しに集中すればいいだけだった。受付の変わりにノートに自主的に記入してもらうシステムで、盗品とかされないように、カメラが回されてて、そのことも入り口に書いてある。 埃っぽいな、と感想を漏らす跡部先輩は、後輩がどうやったら伸びるかとか、よく考えてくれてる人で、この間の雑誌の企画の関東強豪校サミット・部長座談会での対談でも若のことを“ああいうタイプは、押さえつけると卑屈になって伸びなくなるしな。”と言っていたらしい。 (意識的にその前のセリフはカット。だって、私も、若はわが道を行ってると思うし。私にだけは優しいけど、でも、若の他のヒトに対する態度は結構酷い) 全国大会の時の部長座談会では、“来年は俺の後輩達が優勝する”みたいなことを言っていたらしくて、又聞きしただけの私でも、胸が温かくなるというか、すごく嬉しかった。若やチョータや樺地くんは、もっともっと嬉しかっただろうし、もっともっとやる気が出ただろうな……跡部先輩は本当に後輩をノせるのがうまいなぁ、なんて。 「はい、努力、します。跡部先輩が直々に何を取りに来たんですか?」 棚からパステルとパステル用の 「クラスに長く居ると女子がうるさいからな。息抜きだ」 ああ、たしかに、文化祭前はカップリングモードで、女の子も男の子もそわそわしているというか、好きな子と同じ作業になるように努力したり、いろいろ。だから、跡部先輩のまわりの女の子達がそわそわ浮き立つのも、ちょっとわかるような気がして、私は苦笑して頷いた。 「まあ、用事もあるんだがな。カッティングシートに使える 「……あ、はい。今だしますね」 きっと、私が居なかったら、跡部先輩はがさごそ探したんだろうなと思うと、少し面白い。そんなことを考えながら私は美術室備え付けの大きな棚の引き出しを開けると、画具を片手で抱いたままスキージーを取り出して差し出す。 それと同時に、片手で抱いていた所為で、フィキサチーフの缶が落ちた。 跡部先輩は「悪い」と言いながらスキージーを受け取って、それから缶を拾おうとする私より先に膝を付いて拾ってくれた。膝を付いた跡部先輩の差し出す缶を受け取りながら、何となく、跡部先輩が私に跪いているように見えて気恥ずかしくなる。 |